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2007/03/08

先日

腹が減ったので珍しくラーメン屋に入った。
飯の時分ではないにもかかわらず、数人の客がいた。
値段は安いが、きっとそんなにまずくもないのだろう。
店内に入った瞬間、感じのいい「いらっしゃ〜い!」
という声が二つ重なって聞こえた。
いい予感。

店内は壁が黒いせいか暗く、
カウンターはコの字型になっていて、
中が厨房になっている。
ぼくはコの字が折れ曲がったあたりに座った。
店員の二人は機敏に動いていて、感じも悪くなかった。

ラーメンが出てくるのを待っていると、
一人の女が入ってきた。
が、あんなに感じの良い店員が二人とも無言だった。
無視しているのか、見えていないのか。

女はコの字の一番奥まで入って行き、
席には座らず気まずそうな表情で立っていた。

ラーメンをすすりながらいろんな妄想が駆けめぐる。
女はもともとここの従業員で、
何かの事情で辞めたあるいは辞めさせられたあとも、
こうして日ごとやってきて時を過ごす。
もしくは女は幽霊で子供の心をもったぼくには見えても店員には見えない、
とか。
でも隣のおっさんも不思議そうに女を見てるから、たぶんこれは違う。

そろそろ店内が微妙な空気になってきた頃、
突然店員のひとりが女の前のカウンターにラーメンをおいた。
そうか、いちどラーメンをごちそうになったのに味をしめ、
毎日ラーメンをせびりにきているのにちがいない。
と思ったのだが、女はいつまでたってもラーメンに手をつけない。

突然女の前にラーメンを置いたほうの店員が
カウンターの下をくぐって厨房から出てきた。
そのまま控え室に行くと私服に着替えて出てきた。
で、女の横に座るともの凄い勢いかつ無言でラーメンを食い始めた。
食べ終わるとその店員は、さっきとはうってかわって、
乱暴な物言いで「うおつかれぇ〜!」と言いながら、
女と店を出て行った。

迎えにくるのは勝手だが、外で待ってて欲しかった。
おかげで気が散ってラーメンの味がわからなかったじゃないか。

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